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バンッと素早くドアを閉めて、何事もなかったかの
ように百合ちゃんは姿を消した。
一瞬、何が起こったのか理解出来なくて固まって
いた私だけど、暫くしてハッとする。
未だに手は鬼島君に握られたまま。
そのことが急激に恥ずかしくなった私は、咄嗟に
手をひいてしまった。
「あっ…」
いくら恥ずかしかったからって、これじゃあ拒絶
してるみたいだ。
何て言ったらいいかぐるぐると考えていると
近づいていた距離を離し、鬼島君ははぁっと深い
ため息をつく。
…怒ってるのかな?
心配になって声をかけようとしたら、ポツリと
溢した。
「アイツ、タイミング悪すぎだろ。」
その声は怒ってるというより、どこか拗ねている
ようで少しホッとする。
さっぱりと黒くなった髪をくしゃりとすると
鬼島君はじっとこちらを見つめた。
それが何だか甘く感じて、ドキドキを隠せない。
「俺に触られんのは嫌なのか?」
「嫌じゃないよ。」
すぐに否定しても、鬼島君は納得をしてないみたい。
そうだよね。
さっきの態度は勘違いさせちゃうよね。
相変わらず心臓はうるさいけど、思いきって口を
開く。
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