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「ドキドキしちゃうの…。」
私の声はやっぱり小さい声だったけど、鬼島君には
しっかり届いたみたい。
ほら、今もこんなにドキドキしてる。
何とか気持ちを落ち着かせようと、一つ息を吸う。
「鬼島君に触られるとドキドキして、どうしたら
いいか分からなくなっちゃうの。
…友達の時は平気だったのに。」
「当たり前だろ。
もう友達じゃねぇんだから。」
そう言った鬼島君の顔は珍しく赤くて、すごく
照れてるんだってことが分かった。
きっと私も同じくらい赤くなっちゃってるんだろう
けど、嫌じゃない。
恥ずかしいけど、嫌じゃないと思う。
「付き合ってんだから、前と同じだったら困る。」
ボソッと、私に負けないくらい小さな声だったけど
鬼島君のそんな囁きは確かに聞こえた。
お互いの気持ちを確かめ合って、つまりはそういう
ことなんだろうなって何となく今まできちゃった
から、ちゃんと言葉にされて嬉しい。
だけど初めてのことだらけで、やっぱりどうしたら
いいか分からない私は、頷くことしか出来なかった。
もっと自分の気持ちを上手く伝えられたらって思う
けど、今はこれが精一杯。
でも、鬼島君の切れ長の瞳がふわりと緩んで
優しく見つめてくれる。
だからこれから頑張っていこうって、そう
思えた───。
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