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「待たせたな。」
「ううん。」
今まさに考えていた人が来て、少し恥ずかしく
なる。
でも視線は鬼島君に釘付けだった。
こうやって教室でその姿を見るのも今日が最後
なんだって思ったら、寂しくなってしまう。
だから少しでも目に焼き付けておきたかった。
そんな私の前にゆっくりとやってきた鬼島君は
心配そうに顔を覗く。
「どうした?」
「こうやって教室で会うのも今日が最後なんだな
って思って。」
二人きりの教室を見渡す。
鬼島君と初めて会ったのはここだった。
まさかあの時はこんな風に仲良くなれるなんて
思ってもみなかったけど。
「そう言えば亜衣と初めて会ったのはここ
だったな。」
私と同じことを考えていたのか、鬼島君がポツリと
口にした。
たった一年前のことなのに、いろんな思い出がある
からすごく懐かしく感じる。
ふっと小さく笑った鬼島君は、すごく優しい顔を
してた。
「あの日、親父にせめて自分の席ぐらいは確認しとけって言われてさ。
すげー面倒くせぇって思ってたけど来てよかった。」
ふいにその優しい眼差しが私に向けられる。
「亜衣に会えたからな。」
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