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あの日、今まで学校に来なかった鬼島君がどうして
急に来たのか初めて知った。
私に自分の席を聞いた理由も。
きっかけは鬼島君のお父さんのその一言だったと
分かって、心の中でそっと感謝した。
だってあの日、鬼島君が学校に来なかったらきっと
私と話すことなんてなかったはずだから。
私も会えてよかったって伝えたいのに、声が出て
こない。
ドキドキドキと心臓の音が外に聞こえちゃうんじゃ
ないかってくらいうるさい。
そんな私の手をふいに掴んだ鬼島君。
えっと思って顔を上げれば、どことなく頬が赤い
ような気がした。
「これ、やる。」
「これって…」
言いながら私の手に乗せられたもの。
それは見慣れたボタンだった。
確かめるように鬼島君の学ランを見れば、上から
二番目のボタンだけが外れてる。
「亜衣に持ってて欲しいんだよ。」
そう言った鬼島君は照れているのか、口調はかなり
ぶっきらぼうだったけどちゃんと気持ちが伝わって
きた。
改めて手の中にある第二ボタンを見つめた私は
それをぎゅって握りしめる。
「ありがとう。大切にするね。」
胸がいっぱいになってしまった私は、勢いに任せて
鬼島君に抱きついた。
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