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夕焼け色に染まった教室に一人佇む。
相変わらずぼっちな私。
でも一人きりのこの教室は、数十分前とは明らかに
違って見える。
いわゆる不良って呼ばれてる人と関わることに
なるなんて、思ってもみなかった。
それもあの鬼島君と。
喧嘩では負けなし。
怒らせた人は即病院送り。
毎日警察に追われている───
そんな噂がある人なのに。
そっと自分の机に視線を落とす。
かけてあった鞄を持って、帰ろうとするけど
自然に隣に目が向いた。
「鬼島康平君…」
口からポツリと名前が溢れる。
自分で聞いた自分の声は、やっぱり気持ち悪くて
とても"可愛い"だなんて思えない。
それでも、少しだけ…ほんの少しだけ心の
奥底が温かくなった気がした。
鞄を抱えて机に背を向ける。
鬼島君はほとんど学校に顔を出さない人。
滅多に来ないって言ってたし。
だからもう会うことも、もちろん話すこともない
かもしれない。
…ただ、よろしく頼むって笑ってくれた。
教室から出る私の足は心なしか軽い。
明日からまたぼっち生活が続くのは分かってるけど
今は嬉しかった。
でも、そんな考えを裏切るように、この日から
私の生活はガラッと色を変えていく───。
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