押す×退く

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何となく、噂の話をしてる鬼島君が寂しそうに 見えた気がしたから。 一瞬間ができて、余計なことを言ってしまったかな と内心ビクビクしていたらふいに目を反らされて しまう。 やっぱり言わなきゃよかったかな…なんて 考えていたら 「…ありがとな。」 ボソッと、耳を澄ませなければ聞こえないくらいの 小さな声が聞こえてきた。 よく見ると、髪の隙間から覗く耳は少しだけ赤く なっている。 ───もしかして、もしかしなくても照れてる? かなり意外なものを見てしまって驚いたけど 何だか胸の辺りがくすぐったい。 「鬼島君は…その、周りの人達のこととか 噂とか気にならないの?」 「別に。」 ふいにくしゃっと髪をかきあげた鬼島君は 淡々と告げる。 「俺がやりたいようにやって怖がられるんなら しょうがねぇし。 一人で居ることには慣れてる。」 それを聞いて、素直に強い人だなって思った。 鬼島君の言葉には弱さを感じない。 やせ我慢とか、強がりじゃないことはよく分かる。 ある意味、羨ましい気持ちで見つめていると 切れ長の瞳がこちらを見た。
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