押す×退く

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「日下部は一人で居るのが嫌なのか?」 私は息を詰まらせた。 鬼島君は別に私を追い詰めるつもりはないと思う けど、あまりに真っ直ぐに見つめられてすぐには 返事を出来ない。 切れ長の瞳がより鋭く感じる。 何となくその瞳を見ていることが出来なくて そっと視線を外した。 そして言葉にする代わりに、ゆっくり頷く。 「本当は友達ができたらよかったんだけど…」 こんなこと、今まで誰にも言ったことはなかった。 そもそも誰かとこんなに話をしたのも久しぶり だから当たり前だけど。 何故だろう? 鬼島君が静かに私の話を聞いてくれているのが 分かるからかもしれない。 少しだけ沈黙の時間が訪れる。 突然そんなことを言われて反応に困っているのかな って気まずく思っていたら、ふいに鬼島君は 口を開いた。 「じゃあ俺がなってやるよ。」 一瞬、何を言われたのか分からなくてポカン としてしまう。 「えっ?」 「だから、友達になってやるって言ったんだ。」 慌てて隣を見上げると、鬼島君の鋭い瞳がどこか 優しげに和らいでいた。 思わずドキッとしてしまう。
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