押す×退く

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私が驚いて固まっていると鬼島君は何でもない ように、持って来ていたコンビニの袋に手を 伸ばす。 そしてその中からパンを出すと、当然のように 食べ始める。 …あ、そうだ。 そう言えばお昼休みだったんだ。 ってことにふと気づいた。 「食べないのかよ?」 「あっ…」 ふいに鬼島君に声をかけられて我に返る。 視線の先には私のお弁当箱。 その視線に促されておずおずとお弁当箱を 開ければ、どこか満足そうな顔をしてまたパンを 食べ始めた。 今まで賑やかな教室で一人で食べていたお昼。 ここには鬼島君しか居ないし、そんなにおしゃべり な人じゃないみたいだから教室に比べたらずっと 静かな空間。 なのに教室で食べている時より、ずっと楽しい 気がした。 「なんか俺の話ばっかしてるな。 日下部の話も聞かせろよ。」 パンをかじりながら呟いた鬼島君。 その言葉に私の箸は止まる。 数回瞬きをしてから、ご飯をゆっくり飲み込んで 意を決して口を開いた─────。
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