体育祭×友情

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「もうすぐ体育祭だね。」 自然に声のトーンが上がってしまう。 鬼島君が鍵を壊したことによって解放された 屋上は、他の人の目を気にしなくていいから 私にとってとても居心地がいい。 焼きそばパンをかじっていた鬼島君は、切れ長の 瞳をこちらに向けた。 「日下部は好きなのか?体育祭。」 「うん。 私、運動は苦手だけど見てるのは好きなの。」 「なるほどな。」 言いながらまた焼きそばパンをかじる。 鬼島君は決しておしゃべりじゃない。 でも、こうやって私のとりとめもない話に 付き合ってちゃんと聞いてくれる。 それが嬉しかった。 「鬼島君は?体育祭は好き?」 「好きとか嫌いっつーか、そもそも俺は 出たことねぇからな。」 何でもないことのようにサラッと告げられた事実。 内心かなり驚いたけど、でも言われてみれば確かに 体育祭で鬼島君の姿を見たことはない。 「出たいと思わないの?」 「正直、あんま興味ねぇからな。 授業もそうだけど、俺は俺に必要だと思えない ことはしたくないんだよ。」 「必要だと思えないこと…?」 鬼島君の言いたいことがいまいちよく分からなくて 首を傾げる。 すると、食べ掛けの焼きそばパンを口に放り込んで 私に向き合ってくれた。
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