体育祭×友情

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「だってよ、微分積分?とか将来の役に立つとは 思えねぇし。 大人に押し付けられてる感じがするんだよ。」 そう言って、ぐっと距離を詰めて私の目の前に 来た鬼島君はその赤みがかった髪を耳にかけた。 すると、耳に光るピアスが綺麗に光って見える。 「このピアスも。校則違反だ何だって言いやがる けど、何がダメなのかさっぱり分からねぇ。 ちゃんと俺が納得出来る理由があるなら、やめて やるのにな。」 思わず黙ってしまう。 鬼島君が言ってることはすごく極端だと思うけど でも確かに言われてみれば、反論することは 出来ない。 「だからさ、体育祭とかそういう行事ってやつも 勝手に押し付けられてる感じが俺はする。」 私は思わず見とれてしまった。 鬼島君はただ面倒くさいからとか、格好つけるため だとかでそういう行動をしてるわけじゃないんだ。 今まで当たり前だと思っていたことが、実は 当たり前じゃないのかもしれないって初めて感じる。 それをちゃんと自分の意見として口に出せる 鬼島君は、普通の人とは外れた道を進んでるの かもしれないけど、羨ましいなって少し思った。 「鬼島君はすごいね。」 つい口からそんな言葉が飛び出す。 「別にすごくはねぇだろ。」 ボソッと呟いて、鬼島君は視線を反らした。 気に障ったのかなと思ったけど、違うらしい。 だってピアスが光る耳元が微かに赤く染まって いたから。
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