20人が本棚に入れています
本棚に追加
「だ、だって、想像しちゃったんだもん。
鬼島君は運動神経よさそうだし。」
私達の間に、なんとも言えない空気が流れる。
何度か言われた"可愛い声"という言葉を思い出して
しまって、顔が熱くなった。
それを誤魔化すようにまた箸を持ったら、鬼島君は
ポツリと呟く。
「まぁ、足は速い方だけどな。」
「そうなのっ?」
予想が当たってたことが嬉しくて、つい過剰に
反応してしまった。
私は運動が苦手だから、鬼島君を羨ましく思う。
リレーに出たらきっと大活躍するんじゃないかとか
そんなことを勝手に考えていたら、鬼島君は
ふっと小さく笑いを溢した。
「そんなに俺が体育祭に出てるとこを見たいのか?」
「…あっ。」
たぶん私の考えていることが顔に出てたんだと思う。
気付けばやや前のめりになっていたし、無意識の
こととは言え、恥ずかしい。
どんな顔をしたらいいのか分からなくて焦って
いると、鬼島君はまた口を開いた。
「日下部がそう言うんだったら出てもいいけど。」
「えっ?」
「ただし、条件がある。」
鋭い切れ長の瞳がしっかりと私を捉える。
一体、どんなことを言われるのかと構えて
いたら───
「俺のことを声を出して応援すること。」
予想外のことが耳に入ってきた。
最初のコメントを投稿しよう!