体育祭×友情

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「えぇっ!?」 「何だよ?そんなに驚くことかよ。」 私は思わず箸を落としてしまった。 鬼島君の出した条件は他のどんな条件よりも ハードルが高い。 「だって…この声で応援なんて…」 自然と手が口元に行ってしまう。 こうやって今話せているのはあくまでこの空間 だからであって、みんなが居る前で声を出すなんて 想像も出来ない。 「俺は変な声だなんて思ってないっつったろ。」 私が何か反論する前に、鬼島君はぐっと距離を 近づけてその切れ長の瞳で覗いてくる。 「どうせ体育祭なら周りの応援の声もうるせぇ だろうし、ちょうどいいと思うけどな。」 「でも…」 「"友達"の応援くらいしてくれてもいいん じゃねぇか?」 決して、押し付けるような言い方をされた訳では ないけど、その一言はずるいと思った。 …本当は密かに憧れていたんだ。 体育祭で友達を応援したりすることに。 私が黙ったのを了承したと捉えたのか、鬼島君は どこか満足気に口元に笑みを浮かべると元の 体勢に戻る。 「じゃ、そういうことで。 よろしくな。」 そう言って、またパンを頬張り始めた鬼島君に 結局何も反論することは出来なかった。 高校最後の体育祭はどうやら大変の日になりそう です───。
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