体育祭×友情

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それから、体育祭の種目を決めることになって クラス委員の子が仕切っていた。 どんどんみんな種目が決まって行って、最後に 一番人気の種目…リレーの選手を決める時に それまでじっと黙っていた鬼島君はすっと手を 挙げる。 するとクラス委員の子を始め、みんなの視線が 一気に鬼島君に向いて、しーんと一瞬教室は 怖いくらいの静寂に包まれた。 「あ…じゃあ、鬼島君で…」 聞いていて可哀想なくらいか細い声で、クラス委員 の子が答える。 そして、震える手で黒板のリレーの選手の所に "鬼島康平"と書いていった。 それを確認した鬼島君はチラリと私を横目で見る。 きっとこのクラスの誰も気づいてないと思うけど その顔はどこか悪戯っ子のようで、何だか くすぐったくなった。 「応援よろしく。」 私にしか聞こえないくらいのハスキーな声で囁かれて思わずドキッとしてしまう。 こっちはあたふたしてしまってるのに、鬼島君は 何事もなかったかのように前を向いてしまった。 他のリレーの選手が決まっていく中、私は 早くも一人緊張を隠せない。 鬼島君がリレーで走ってる姿を見るのはとっても 楽しみ。 …でも、それを声を出して応援するのはやっぱり 勇気がいる。 もちろん応援したい気持ちはあるけど。 そんな私の心の葛藤を知ってか知らずか、鬼島君は 相変わらず涼しい顔をしていた。
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