体育祭×友情

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異様な盛り上がりをみせるみんなの後ろについて そっと、人の間から覗く。 私はリレーに出るわけじゃないのに、こんなに緊張 しているにも関わらず、鬼島君はそんな素振りを 一切感じない。 ただ、眼光鋭く前を見据えていた。 審判がピストルを構えたことによって静まり返る グラウンド。 みんな息を潜めてリレーの選手を見守ってる。 その一瞬がとても長く感じた。 パンッ───と、スタートの合図が鳴って一斉に 走り出す選手達。 とたんに大歓声に包まれるグラウンド。 物凄い熱気の中、私は自分が走るわけじゃない のにドキドキしてしまっていた。 序盤はいいペースできていたけど、3番目の人が バトンを落としてしまったことによってうちの クラスは順位をかなり落としてしまう。 みんなの声援にも熱が入る中、そのまま順位が 変わることなくついに、アンカーの鬼島君へと バトンが渡った。 「…っ。」 思わず手に力がこもる。 鬼島君の走りは陸上部もビックリなほど速くて ぐんぐん加速して1人…2人…なんと 3人も抜いてしまった。 クラスのみんなの声援がより大きくなる。 きっと、相手があの鬼島君だってことをすっかり 忘れてしまってるんだと思う。 …何だか息が苦しい。 赤みがかった髪を靡かせながら、風を切って 走るその姿に私は見とれてしまっていた。
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