20人が本棚に入れています
本棚に追加
今までで1番の歓声が沸き起こる。
その瞬間がまるでスローモーションのように見えた。
鬼島君が先頭でゴールを走り抜けるその瞬間が。
リレーで1位になったことにより、うちのクラスは
総合優勝したことになる。
だから、クラスのみんなは跳び跳ねて喜んだ。
そんな中私は…嬉しいって気持ちはもちろん
あるんだけど、それよりも未だに信じられない
気持ちで鬼島君を見つめてしまう。
自分が人前であんなに大きな声を出したことも
そうだし、鬼島君が1位でゴールしたことも。
何だか夢を見ているような感じがする。
気付けば、私はクラスのみんなから少し外れた
所に立ち尽くしてた。
やや乱暴に腕で汗を拭った鬼島君は、ふいに
こちらに顔を向けるとそのままゆっくりと
歩いてきた。
その姿はまるで狼のようで、やっぱり存在感が
凄い。
もうリレーは終わったはずなのにドキドキと
心臓がうるさい。
鬼島君はいつの間にか私の目の前までくると、ただ
顔を見上げていた私を見て表情を緩めた。
…えっ?と思った時には頭の上に大きな手が
乗っていて、ポンポンと軽く撫でられる。
「応援ありがとな。」
そう言った鬼島君の声は、すごく優しくて
心の奥がくすぐったくなった。
最初のコメントを投稿しよう!