雨×ケンカ

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雨×ケンカ

気付けば春はあっという間に通り過ぎ、季節は いつの間にか梅雨に入っていた。 毎日毎日、飽きるほど雨が降る。 梅雨はジメジメしてるし、傘が荷物になるし… いろいろマイナスなことが多くて毎年憂鬱だった けど、今年はそれほどでもない。 それはきっと今、私の隣に居る"友達"のお陰だと 思う。 「悪ぃな。」 しとしとと降る雨の中、傘を持つ鬼島君は ふいにポツリと謝った。 私は慌てて首を振る。 「ううん。 むしろ傘を持ってもらっちゃってごめんね。」 「何言ってんだよ。 俺が傘に入れてもらってんだから、これくらい 当然だろ。」 言いながら鬼島君は然り気無く、傘を私の方へ 傾けた。 実は今…私達はいわゆる相合い傘をしています。 何故かと言うと、朝は晴れていたのに夕方になって 雲行きが怪しくなって、突然雨が降りだしてしまったから。 鬼島君は天気予報を見ていなかったみたいで、傘を 持ってこなかったとのこと。 だから私の傘に一緒に入ってもらって、こうして 二人で帰ることになった。 「それに、俺の方が背が高いしな。」 その言葉に思わずドキッとしてしまう。 確かに鬼島君は見上げるほど背が高い。 私が傘を持つのは不可能だ。 それは当たり前のことなのに、何だか女の子扱い をしてもらっているようで恥ずかしい。
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