雨×ケンカ

3/12
前へ
/113ページ
次へ
そう言った声はどことなく照れていて、それが 分かってしまって更に恥ずかしくなった。 さっきまではなかった、触れ合う腕の鬼島君の 体温がやけに熱く感じる。 自分で言い出したことだけど、なんてことを言って しまったんだろうって焦る。 …今更焦っても遅いけど。 おずおずと顔を上げれば、いつも眼光鋭く前を 見ているはずの鬼島君のどこか困ったような顔。 やっぱり目元は赤い。 頬も髪の毛に負けないくらい赤い。 「何だよ?」 ふいに視線をチラリと向けられる。 ドキドキと心臓の音がうるさい。   何か言わなくちゃって思うのに、何にも考え られない。 「あっ、えっと…」 「あんまジロジロ見るなよ。」 「うん…ごめんなさい。」 口調も少しきついし、何だか鬼島君が怒っている ように見える。 謝ったのと同時に顔を下げた。 …そうだよね。 いくら友達でも、あんまりジロジロ見られたら いい気はしないよね。 一人、反省をしていた私の頭上から─── 「別に怒ってるわけじゃねぇ。」 何とも言えない、鬼島君の声が聞こえた。
/113ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加