雨×ケンカ

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意識したとたん顔を上げられなくなってしまって 雨に濡れる地面を見ながら歩いていたら、ふと 鬼島君の足が止まる。 曲がり角でもないし、道の途中で止まるなんて どうしたんだろうって思って顔を上げた。 視線の先にはさっきまではとは別人のような 初めて会った時のような鋭い顔をした鬼島君。 漂う空気も威圧的になっている。 傘を持ったまま、射るように見つめる先に 何があるんだろうって不思議に思ってその視線の 先を追った。 すると… こんな言い方をしてはいけないかもしれないけど いかにもガラの悪い他校の5人組がこちらに歩いて きている。 ゆったりと、大きく肩を振りながら歩く姿は よくドラマとかで見るチンピラみたいで、鬼島君を 挑発しているみたいだった。 「久しぶりだなぁ、鬼島。」 その5人組の中心を歩くリーダーっぽい派手な 金髪の人が、ふいに口を開く。 すると鬼島君は、彼等から私を背で隠すように 一歩前へ出た。 目の前に立ち塞がった背中はやけに大きく感じる。 「最近見かけないと思ったら、まさか女ができてる とはな。 驚いたよ。」 あからさまに馬鹿にしたような口調。 でも鬼島君は何も言わない。 顔は見えないけど、きっと怖い顔をしてるんだろう ってことは分かった。 だって、リーダーっぽい人以外みんな腰が退き気味 だから。 ただ、リーダーっぽい人は臆することなく近づいて くる。 気付けば距離は手を伸ばせば届くところまで 来ていた。
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