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鋭かった視線が私に向く。
するととたんにどこか申し訳なさそうな心配顔に
なったから、何だか安心した。
「日下部を巻き込んで悪ぃ。
怖かったよな?」
長身の鬼島君が目線を合わせるため、少し屈むようにして顔を覗いてくる。
その声はやっぱりハスキーではあるけど、さっきと
違って優しい響きを持っていた。
相変わらず心配そうな顔をしているから、慌てて
首を横に振る。
…怖くなかったと言えば嘘。
ああいういかにもな人達に会ったことなんて
今までなかったし。
でも一人じゃなかったから。
鬼島君が居たから。
だから大丈夫だよって伝えるようとしたけど
それよりも早く鬼島君が言葉を続けた。
「俺が居る限り、ぜってぇ危険な目に合わせたり
しねぇから。」
ドクンッと胸が震える。
鬼島君のその切れ長の瞳が真っ直ぐに、私を
捉えていた。
「日下部のことは俺が守る。」
どうしよう?
何て答えたらいいんだろう───?
ドキドキして、息が出来なくて苦しい。
そんな私の様子に気づいたのか、突然ハッとした
鬼島君は気まずそうに髪をくしゃりとかきあげた。
「友達だからな。」
って、最後にボソッと告げられる。
この時、私は恥ずかしさでいっぱいいっぱいで
大事なことを忘れていたんだ───。
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