雨×ケンカ

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本当なら屋上には鍵がかかっているはずだから こんな所に人が居るのは変だ。 しかも外は雨。 それなのに、屋上へ出るドアの前に誰かが 蹲っている。 恐る恐るその人を確認すると… 見間違えるはずのない、あの赤みがかった茶髪が 見えた。 ハッとして階段を駆け上がる。 「鬼島君っ?」 顔を上げた鬼島君は珍しく眠そうにしていた。 私の顔を確認したとたん、一つ欠伸をする。 そして視線は手に持つお弁当へ移動した。 「やべぇ。寝過ごしたか。」 どうやら鬼島君はここで寝ていたらしい。 私のお弁当を見て、今がお昼休みだと気づいた みたいだった。 目を覚まそうとしているのか、前髪をくしゃりと かきあげる。 その姿にホッとした。 …よかった。 具合が悪くてお休みしたわけじゃないんだ。 そんな風に思っていた私の目にふと、飛び込んで きた痛々しい傷。 鬼島君の右手の甲には、何かで切りつけられた ようなそんな傷がついていた。 それは昨日にはなかったもので、どう見ても 誰かにつけられたもの。 考えるよりも早く私は、鬼島君に駆け寄って その大きな手をとっていた。 「鬼島君…この傷っ…」
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