雨×ケンカ

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鬼島君はさっきより更に驚いたようで、目を丸く して固まっている。 私は自分でもよく分からないけどグッと感情が 込み上げてきて、手に力を込めた。 「今日…鬼島君が学校に来なくてずっと 心配してたんだよ。」 初めて話した次の日から、ちゃんと学校に来て くれていたから本当に心配したんだ。 昨日の雨で風邪をひいちゃったのかな? とか、いろいろ考えてみてはため息ばかり漏れた。 「鬼島君にとっては大したことない傷なのかも しれないけど…私は嫌っ…」 鬼島君の傷ついた大きな手にポトッと涙が落ちる。 それは間違いなく私の涙。 急に泣き出してしまうなんて可笑しいって思っても 涙は止まってくれない。 「鬼島君が危険な目に合うのは嫌だよっ…」 涙でいっぱいで視界がグシャグシャになる。 泣き顔を見られるのが恥ずかしくて、咄嗟に 俯いた。 鬼島君を困らせてるのは分かってる。 だけど、どうしても嫌だった。 だって大切な人だから。 初めて出来た私の"友達"だから。 ついに声を詰まらせて本格的に泣き始めた私の 頭上から、はぁっと小さく息を吐き出すのが 聞こえた。 「…泣くなよ。」 そう言った鬼島君の声は聞いたことがないくらい 弱々しい。 驚いて顔を上げようとしたら─── 突然、腕を引かれた。
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