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その日も学校が終わって二人で帰り道を歩く。
傘を一緒にさして帰ったあの日から、鬼島君は
私を家まで送り届けてくれるようになった。
何度か遠慮したんだけど、"どうせ一緒の方向だろ"
って言われてしまう。
口には出さないけど、私のことを心配してくれてる
のが分かる。
だって、黒木って人と会った道を通らないように
してるから。
いつものように、私のとりとめもない話を聞いて
くれていた鬼島君。
ふと、会話が途切れて辺りには蝉の声がだけが
鳴り響く。
そんな中ポツリと鬼島君が呟いた。
「なぁ…日下部は花火って好きか?」
唐突な質問に顔を上げた私は、首を傾げつつ答える。
「うん、好きだよ。」
「だったら、見に行かねぇか?」
「えっ?」
予想もしなかったことに驚いて、思わず声を上げて
しまった。
鬼島君は少し視線を反らす。
「来週あるだろ。花火大会。
勉強の息抜きにどうだ?」
そう言った鬼島君の表情はこの暑さなのに
涼しげで、でも声はどこか照れ臭そうに聞こえた。
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