花火×約束

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ドキンッと心臓が大きく跳ねる。 同時に何だか顔が熱くなってきた。 それはきっと気温のせいだけではないと思う。 鬼島君は静かに返事を待っている。 たぶん時間にしたら大した長さじゃないはずだけど すごく長い時間に感じた。 「…いいの?」 「俺が誘ったんだからいいに決まってんだろ。」 「だって、お父さんのお手伝いで忙しいん じゃないの?」 「夜は関係ねぇよ。」 もうとっくに答えは決まってる。 だけどどこか遠慮してしまう自分が居た。 だって、初めてだったから。 こうやって友達に遊びに誘ってもらうのは。 それが嬉しくて、鬼島君が花火大会に誘ってくれた のが嬉しくて…照れてしまう。 「で、行きたいのか行きたくねぇのかどっち なんだ?」  「行きたい、です。」 思わず敬語になってしまった私に、鬼島君は 小さく笑った。 切れ長の鋭い瞳がやんわりと緩められる。 「じゃ、決まりだな。」 そう言った鬼島君は優しい顔をしてた。 今の私はとっても嬉しそうな顔をしているん だと思う。 恥ずかしいけどニヤけるのを抑えられない。 …私が一日くらい遊びたいって言ったから 誘ってくれたのかな? やっぱり鬼島君は優しい。 寂しくなるなと思っていた夏休みが、今この瞬間 楽しみになってしまっていた。
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