花火×約束

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その瞬間、何故か分からないけどギュッて胸が 苦しくなった。 心臓の音が大きくなって、電話越しでも向こうに 聞こえてしまうんじゃないかと思ってしまう。 そっと、落ち着かせるように胸に手を当ててみる。 「私も、鬼島君と花火大会に行けるの楽しみに してるよ。」 恥ずかしいけど、すっごく恥ずかしいけど、これは ちゃんと伝えたいと思った。 相手が目の前に居る訳じゃないのに、自然と表情が 緩んでしまう。 『だから、その声でそういうこというのは反則 だろっ…』 そうポツリと、鬼島君は漏らした。 はぁっと小さく息を吐いたと思ったら、私が何か 言う前にこんな言葉が聞こえる。 『なんか、あれだな。 電話で聞く声はまた違って聞こえるんだな。』 それはさっき私が思っていたことと同じで、たった それだけのことに嬉しくなった。 『くだらねぇことで電話して悪い。 勉強の邪魔したか?』 「ううん。そんなことないよ。」     『そっか。 じゃ、また明日。学校で。』 「うん。また明日。」 通話を終わらせて、スマホを机に置く。 でも未だに胸はドキドキしてる。 時間にすればたった数分の会話なんだけど、それ でも楽しかった。 結局その夜は、花火大会のことで頭がいっぱいで 勉強は捗らなかった私。 夏休みはもうすぐそこまで迫っていた───。
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