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───それからあっと言う間に夏休みはやってきて
それと同時に楽しみにしていた花火大会の日も
すぐにやってくる。
鬼島君は家まで迎えに行くって言ってくれたけど
まさか男の子と二人で花火大会に行くだなんて
お母さんに知られると勘違いされるに決まってる
から現地で待ち合わせにしてもらった。
でも、それはそれでまるでデートのようで、何だか
落ち着かない。
早めに浴衣を着付けてもらった私は、けっきょく
予定の時間よりも30分も早く家を出た。
カランカランと慣れない下駄を鳴らしながら
歩いていくと、だんだんと人も増えていく。
ちょうど前を歩いていたカップルの彼氏さんが
浴衣を着た彼女さんに"可愛い"って言ってるのを
聞いて、勝手に想像してしまった。
…鬼島君、私の浴衣を見たらどう思うかな?
可愛いって少しは思ってくれるかな?
そんなことを考えている自分にハッとする。
鬼島君は"友達"なんだから。
何を変なことを考えちゃってるんだろうって。
気を取り直して歩いていくと、待ち合わせである
花火大会の会場の入口にたどり着いた。
スマホで時間を確認すると、待ち合わせの時間まで
30分以上はある。
学校以外でこうやって会うのは初めてだから
やっぱり落ち着かなくて、ソワソワしながら一人
鬼島君を待つことにした。
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