花火×約束

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こういう時ほど、時間が経つのが長く感じられる。 私と同じように待ち合わせをしている人達は 周りにたくさん居るけど、一人また一人と減って いく。  その度にチラチラとスマホで時間を確認して しまう。 私が早く来すぎちゃっただけなんだから、そんなに 焦ったらいけないって分かってる。 だけど、いつの間にか時間は待ち合わせの時間に なってしまった。 もう、みんな場所取りのために移動してる。 さっきまで周りに居た待ち合わせの人達はもう 居なくなってしまった。 残っているのは私だけ。 不安になった私は、鬼島君に電話をかけてみる。 「………。」 でも、電話は鳴り続けるばかりで繋がってくれ ない。 更にLINEをしてみるけど、既読にならない。 鬼島君は約束を破るような人じゃないから もしかして、何かあったんじゃないかって急に すごく心配になった。 もう一度、電話をしようとスマホを手に取った時 ふいに誰かが前に立ち塞がる。 「君、一人?」 声をかけられて顔を上げると、少し歳上と思われる お兄さんさんがにこやかに立っていた。 「待ち合わせの人来ないの?」 「あ…」 「もうすぐ花火始まっちゃうよ?」 怖そうな人ではないけど、いきなり知らない人に 話しかけられて私は体が固くなってしまう。 だけどその人は気にせず話しかけてきた。 「俺も仲間とはぐれちゃってさ。 よかったら一緒に見ない?」 そう言ってその人は、然り気無く私の腕を掴んだ。
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