20人が本棚に入れています
本棚に追加
噂には聞いていたけど、こうして姿を見るのは
初めて。
喧嘩では負けなし、怒らせたら即病院送り
学校に来ることはほとんどなくて毎日外で
警察に追われている───そんな噂を思い出した。
確かに同じクラスらしいけど、新学期になって
一週間…鬼島君は一度も学校に来ていなかった
はず。
だから、さっきの彼が驚いたのも分かる。
もちろん私も例外ではなくて、噂でしか聞いたことがない、ある意味都市伝説みたいな人が目の前に
居ることに驚いていた。
どこに居ても目立つような赤みがかった茶髪。
耳には校則で禁止されているはずのピアスが光って
いるけど、それ以上に眼光の方が光っている。
引き締まった顔に鋭く光る瞳。
───例えるなら狼みたいな人。
思わず立ち尽くしていた私に、鬼島君は然り気無く
足を踏み出して距離を詰める。
「あんたさぁ」
唐突に話しかけられて、ビクンッと体が跳ねた。
…どうしようどうしよう。
もしかして私、さっきよりピンチなんじゃない
かな。
逃げたくても、この鋭い視線を前にすっかり
恐くなってしまった私の体は固まっている。
目の前に立った鬼島君を見上げると、あまりの
存在感に圧倒されて声が出ない。
背の高さから、完全に見下ろされる形になる。
何を言われるんだろう?
いや、何をされるんだろう?
ビクビクと、まるで捕食前の草食動物のような
気持ちで居たら…
「ああいう時は声を上げないと駄目だろうが。」
───信じられない台詞が聞こえてきた。
最初のコメントを投稿しよう!