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聞こえてきたのがあまりに予想外な言葉だったから
私はすぐに理解出来ない。
パチパチとただ、瞬きしていたら鬼島君は
不機嫌そうに眉を寄せた。
「あんたいかにも大人しそうだし、俺が来なかったらどうなってたか分かんねぇだろ。」
「………。」
「ああいう時は、とにかく大声上げとけば
いいんだよ。」
頭上から私を見下ろす顔はやっぱり不機嫌顔だ。
目付きは鋭いし、少しハスキーな抑えた声は
威圧感がある。
はっきり言って怖い。
でも何でだろう。
話してる内容は、まるで私のことを心配してくれてるみたいなんだけども。
「おい。聞いてんのか?」
鬼島君は眉間に皺を寄せて、グイッと顔を近づける。
すぐ近くで凄まれて、思わず息が詰まった。
慌ててコクコクと頷いてみせると、はあっと
軽く息を吐いたのが分かる。
赤みがかった茶髪がさらりと揺れた。
すると、さっと私から視線を外してズカズカと
教室へ入って行く鬼島君。
そう言えば何しに学校へ来たんだろう?
もう授業は終わっているし、今来たところで何が
あるわけでもないのに。
不思議に思ってその背中を追っていたら、ふと
鬼島君は振り返った。
「なぁ。俺の席どこ?」
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