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考えてみたら、私はさっきから鬼島君に対して
失礼な態度ばかりとっている。
…あからさまに恐がってしまったから、きっと
ああ言ったんだよね。
確かに目付きとか存在感とか、いろいろ恐いけど
でも今の所私は何かされたわけじゃないし、むしろ
助けてもらったんだから噂ほど悪い人じゃないの
かもしれない。
鬼島君はそのまま教室を出て行こうとする。
───このまま何も言わずにいていいの?
もしかしたらもう二度と会わないかもしれないのに。
そう思ったら、ドクンと心臓が震えて考えるより
先に口が開いた。
「あのっ…助けてくれてありがとう!」
自分で自分の声の大きさにビックリする。
こんなに大きな声を出したのは久しぶりだった
から。
と言うか、学校で声を出すこと自体久しぶり。
私が声をかけたことで、教室を出ようとしていた
背中はピタリと止まった。
そして次の瞬間、バッと勢いよく振り返ったと
思ったら、突然こちらへ駆けてくる。
それが物凄い早さだったから、息が詰まった。
あっと言う間に私の前に戻ってきた鬼島君に
ガシッと両肩を掴まれる。
「…っ。」
どうしよう。
怒らせてしまったのかな。
今までにないくらい恐怖を感じて完全に固まって
いたら、鬼島君はゆっくりと私の顔を覗く。
「…今の、あんたが言ったんだよな?」
「………。」
そんな風に前のめりで聞かれたら、頷くしかなくて
私は次の言葉を待った。
何か怒られるのかと、心の中でビクビクしていた
けど鬼島君は急に黙ってしまう。
そして次の言葉は私の予想していたものとは
違った。
「もう一度言ってみろ。」
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