11人が本棚に入れています
本棚に追加
きっかけ
下町風情が残る道を歩いていた。取引先から本社へ帰る途中。丁度秋らしい気温になり、風が心地よい。少し秋らしい香りもする。
「さてと。帰ろうっと。」
そんな独り言を言いながら、気持ち健やかに歩いていた。
下町風情が残る道だが、右手には有名な電気街が立ち並んでいる。さらに左手には古屋や趣がある寺や神社が時折顔をのぞかせている。こんな風景を見ると過去と未来をつなげる中間地点にいるような不思議な気持ちになる。そんなことを感じながら歩いていると・・・
「はあ。困ったわ。どうしましょう。」
そんな声が聞こえてきた。声の方向を見ると、立派なお寺の前で女性がかがんでいた。
女性は着物をきちんと着付けており、髪には簪を指している。傍から見て高貴な雰囲気を纏った女性であった。
その風貌に見とれていると、自然と目線があった。
「どうかされたんですか。」
咄嗟に声をかけてしまった。
最初のコメントを投稿しよう!