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「あ。いえ。ちょっと鏡を落としてしまって。」
とその女性は少し驚いたように言った。
「手鏡ですか?」
「そうなんです。祖母から引き継いだ大事なものでして。」
私は女性の方に近づき、
「それは大変です。どれくらいの大きさですか?」
「ああ。大丈夫ですよ。きっとさっき寄った喫茶店に置いてきたんだと思います。ちょっと戻ってみますので。わざわざありがとうございます。」
「その喫。そうですか・・・。」
一瞬その喫茶店まで一緒に行きますか?と言いかけたが、いきなり初対面でそこまでするのもおかしいかと思った。私の性分として少しお節介な性質があり、行き過ぎた経験を何度もしている。
「では。失礼致します。」
私は少し頭を下げながら、その場を立ち去ろうとすると、カラスのお守りがその女性の巾着に引っかかってしまった。
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