怒髪のキャバ嬢

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「ああ、思いだしたよ。そうだ。その髪型を『ソフトクリームみたい』と確か言ったね」  青年はケラケラと笑い、ユキの頭を指さした。 「そうです。あなたはこの『昇天ペガサスMIX盛り』をソフトクリームみたいとおっしゃった」  ユキはドンペリの入ったグラスをテーブルに音を立てて置くと、勢いよく立ちあがった。  ユキの亜麻色の髪は渦を巻いて上向いていた。そして、そこにはいくつも色とりどりの花飾りがつけられている。 「わたし、この髪型を作るのに、何十時間とかかりました。あなたはそれを褒めるどころか、ソフトクリームみたいの一言で片づけたんですよ!!」  ユキは憤激した。とうとうその怒りは髪の域に達し、ついには怒髪天を衝いた。怒り狂ったユキの髪が、ぎゅんぎゅんと逆立ち伸びてゆき、やがて店の天井を突き破り、夜天に無数の花を咲かせた。  のちに、この事件は反響を呼び、盛り髪の歴史に名を残すことになったのである。
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