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この家では怪奇現象が多い。ラップ音やオーブのようなものは当たり前。たまにポルターガイストでものが動く。それにいちいち怯えて暮らしている。ここは事故物件だったのかと思うけれど、そんなことは言われていない。それでもここは便利な場所だけれど少し古いからと安くなっている。アパートの全部屋がこの家賃だからアパートが建つ前に何かあった可能性を否定できるわけではないけれど、他の人は眠れないとかそういうこともなさそうだ。やっぱりこの安さが魅力で、引っ越したいけれど引っ越したくない。そもそも契約期間というものもよくわからない。よくわからないまま契約するべきではないと今ならわかる。けれど契約のころはそのころで大変だったんだ。それでも今これをどうするか。一人で考えていても何も思いつかないから、ずっと友人に相談していた。
「家賃要求しちゃえばいいんじゃない?」
友人の一人からの提案が目から鱗だった。確かに、この部屋は俺が借りているんだからそこに間借りしているような感じのあちらに家賃を要求して、それが無理なら出ていけってすればいいんだ。
「おい、お前ら! これ以上この部屋にいるなら家賃払え! 払えないなら出ていけ!」
その日帰ると早速言ってみた。そうすると今までラップ音の聞こえない日はなかったというのにピタッと全部なくなった。この部屋に来てから初めての安眠だった。
そして次の日、帰ってくると玄関に髪の毛の塊が転がっていた。
「よし、引っ越そう」
決心は速かった。
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