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中学生になって、子供がどうやってできるのか知った時には、さらに母を軽蔑するようになった。
どこから聞きつけてきたのか、『三山は母親がキャバクラの客とヤってできた子』という噂が流れ始めた。事実なのが余計腹立たしい。
母親がそんな感じなら、娘もきっと尻軽だろう、と思った男子たちに言い寄られたりもした。
まだウブな私はそれに気づかずに、一人の男子と付き合った。
付き合って数週間、無理矢理無人の教室に連れ込まれて押し倒された。
「なあ、お前も母親と一緒でビッチなんだろ?」
そう言いながら。
「あんな奴と一緒にするな!」
私は思いっきりそいつを殴りつけた。拳が切れて、血が滴る。
「いってぇ……何すんだよお前!」
襲い掛かられる寸前に、教室を飛び出した。捨て台詞のように、背中に罵声が浴びせられる。
「可愛くねぇ女!」
うるさい、うるさい。あんな母親と一緒にするな。私はあんな風にはならない。
必死に走って帰って、大事にしまっておいたポシェットをタンスから取り出す。父さんからもらった唯一の思い出。ぎゅっと抱きしめて、膝を抱えて泣いた。
母さんのバカ。父さんのバカ。
脳裏に、宮島での思い出が甦る。繋いだ温かくて大きな手。もう写真なしでは思い出せない父の顔。大きな鳥居。
切った手の甲はずきずきと痛み、指先はひどく冷たく震えていた。
それから学校をサボるようになった。
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