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高校は行っておきなさい、と母は口煩く何度も私に言った。
「うるさいなあ、私の勝手じゃん。だいたいお金ないんでしょ?」
そう言うと、頬を叩かれた。
「あんたを高校に行かせるだけのお金はある。高校は行きなさい。母さんは行けなくて苦労したんだから、行っておいた方が絶対に良い。あんたはこれから一人で生きていかなきゃいけないんだ、その時学歴も何もない女なんて働いて生活できないよ」
母がそんな剣幕で怒るのは初めてだった。
母は7人兄妹の末っ子で、お金もなく高校に行くこともできなかったらしい。それで仕方なく家を出て、キャバクラで働いていた、とその時初めて聞かされた。
「好きで風俗の店で働いている人間なんか、滅多にいないわよ」
学校が嫌なら通信制でも良いから行きなさい、といくつかパンフレットも渡してくれた。私は母に学校でのことは何も話していなかったけれど、薄々察してはいたらしい。学校に行け、と言うことは一度もなかった。勉強はしておきなさい、と言われていたけれど。
10歳の時に話を聞いてから、母とはほとんど口を聞かず、無視してばかりだった。
母もきっと責任を感じていたのだろう、無理矢理に話しかけてくることもなかった。
母にも色々あるのだ、それがわかった時ようやく、母と話すことができた。
許したわけではない、そのせいでたくさん嫌な思いもしてきたのだから。
ただ母も一人の人間であり、人は皆何かしらの事情を抱えているのだ、とこの頃ようやく理解し始めた。
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