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 結局高校は通信制に行くことにした。その方がバイトもできて、家計も少しは楽になると思ったから。  通信制なだけあって、いじめや陰口は全くなかった。顔を合わせる機会がないから、言いようがないとも言う。  昼間はコンビニでアルバイトをした。  一度、あの田中が客として来たことがある。 「やだ、三山さんじゃん。高校行ってないの?」  バカにしたような口ぶりは昔から変わっていない。私は黙々と商品のバーコードを通す。 「母子家庭だもんねぇ、働かないと大変だよね!玲奈応援するよ!」  この歳になって一人称が自分の名前、という時点で頭の悪さが露呈している。そう思ったが口には出さずに、淡々と商品を袋に詰めた。パックのオレンジジュースに、唐揚げ弁当。 「670円です」  田中の相手は一切せず、無視してお釣りと袋を手渡した。  何も言い返さない私にムッとしたのか、 「やっぱ親がクズの家は大変なんだね」  と半笑いで言い捨てて行った。  相手にするだけ馬鹿馬鹿しい。割り箸とストローを入れずに渡したので、せいぜい食べる時に困れば良いよ、と田中が出て行った扉を睨みつけた。  
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