祖母の死

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 ちいちゃいおばあちゃんの細い骨張った指が、私の手をしっかり包んでいたこと。ちいちゃいおばあちゃんと二人でゆっくり田んぼの畦道を歩いたこと。私が好きだからと、隅の畑でイチゴを作ってくれたこと。山の裾にある小さな楕円形の田んぼを、“珠美の田んぼ”と言って私に世話させてくれたこと。  ちいちゃいおばあちゃんの思い出は多くない。ここ数年の祖母の記憶に塗りつぶされてしまっている。それでも、なくはない。  その少ない“ちいちゃいおばあちゃん”の面影が懐かしかった。その面影の薄れ具合が、悲しかった。  “祖母”と“ちいちゃいおばあちゃん”との大きな差異が、悲しかった。そして、悔しかった。  私は、“ちいちゃいおばあちゃん”を消されたことに、きっと怒っていた。“私のちいちゃいおばあちゃん”を消してしまった祖母に、母に、叔母に、父にも、怒っていたのだ、きっと。ずっと。  私は怒っていたのかと納得し、今更な自分に笑えてきた。
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