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「珠美っ」
唐突に彼が慌て出す。
笑っていた筈の私は、泣いていた。
素直に私を思ってくれる彼の横で、私は、ようやく、彼女の死を悼んで素直に泣けた気がした。
彼女を焼いた煙が立ち上がっていった空の、その透き通るような薄い美しい青色が、一瞬鮮やかに浮かんで、消えていく。
私の幸せな家族が消えていったことと、かつてそれが確かにあったことが、胸に詰まる。そしてそれを思って泣く場所のあることが幸せだと思える自分を、静かに感じた。
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