工作撃破

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工作撃破

「なぬーーーーっ⁉ お、お前、デルタだったべか⁉」  一方のシンはどうやら予想外だったようだ。現れた敵の姿にあんぐりと大口を開けている。 「いや、シン……デュオに似てるって気がついた時点で気付いてよ……」  思わず脱力する弟である。 「ふ、ふふん、よくぞお前ら、このオレがデルタだって見抜いたな!」 「あそこまでヒント出されたら、さすがに気が付くよ!」  敵の言葉にすかさずつっこむと、その隣でシンもようやく戦闘態勢を取る。 「よ、よくもオラたちを騙しただべな! 見事な変装、引っかかるところだったべさ!」  兄の言葉に、そうかなぁと少々疑問符を浮かべているシンジである。 「なるほど……あのデュオってヤツの本当の姿が、君というわけか」  双子の隣でリン隊員が再びその剣を構える。 「変化の術を使うとは……。通りで君たちを警備隊は捕まえられないわけだ」  いらだちげな雰囲気を出しつつ、じりじりと近づく隊員に、デルタはにやりと不敵な笑みを浮かべた。 「オレ様を捕まえようなんて百年早いってーの。迷路攻略の暇なんて与えないぜ!」  言いながら、デルタはそのたくましい両腕を前方に突き出して呪文を唱えた。 「いくぜ……! 『破っ』!」  急に空間の空圧が変わった。呪文とともにその両手から生み出されたのは衝撃波だ。空気を走り抜けてくるような衝撃波に、いち早くシンが気付いた。 『防御風壁(ぼうぎょふうへき)!』  呪文とともに、双子とリン隊員の目の前に風の壁が吹き荒れる。だが衝撃波はその風を相殺し、廊下をビリビリと震わせた。 「む、打ち消しただか!」  それに気がついてシンが悔しがったのも束の間―― 「シン! 上っ!」  叫ぶと同時に、シンジはシンに体当りするように壁際に飛び退いた。その直後、いつの間に彼らの上空にいたのだろう。デルタが勢い良く床に落下してきた。 「おらぁああっ‼」  鈍い衝撃音と共に、床が円状に陥没する。デルタの落下とともに繰り出された蹴り攻撃が床をくだいたのだ。博物館の時と違いお屋敷の廊下は頑丈で、一階まで貫通するほどに壊れはしなかったようだ。 「あいっ変わらずのバカ力だべ!」  壁際で間一髪攻撃を逃れたシンが、あきれるように吐き捨てる。 「だれがバカだ‼」 と、思いがけず突っかかってくるデルタである。勢い良く立ち上がるデルタに、双子とリン隊員は素早くその間合いを取る。その立ち位置は先程までと逆転、扉を背にしているのがデルタ、そして階段側を背にシンたちは立ち上がった。間合いを取るためジャンプとともに答えるのはシンジだ。 「別にバカなんて言ってな……」 「バカにバカって言って何が悪いだべ!」  かぶせるように即座に返答するのはシンである。思わずシンジは絶句する。 「このクソガキが……ッ‼」  立ち上がったデルタは、怒りにこめかみをピクピクさせている。 「オメーらみたいなガキに、バカ呼ばわりされる覚えはねぇんだよ! 大体お前ら、オレがバカだなんて見たことないだろうが!」 「あるだべ! オミクロンみたいな子どもにバカにされてただべさ!」  即座に答えるシンの発言には、デルタにとって怒りを助長する単語が入っていた。「オミクロン」はデルタにとっては禁句である。何と言っても水と油のように相性の悪い同士なのだから。  たちまち顔を真赤にして、デルタはその指をシンにつきつけて叫んだ。 「何を〜っ⁉ オミクロンにオレが、バ……バカにされてただと〜⁉ ガ、ガキだからってオレは容赦しねぇからなっ‼」 「……」  もちろん隣であきれているのはシンジとリン隊員である。あっけにとられ、リン隊員はこそこそと隣のシンジに話しかける。 「……あ、あれはシンくん、わざとケンカ売ってるの……?」 「……いやぁ……違うんだけど……そう思われても仕方ないかなぁ……」  兄の様子に深くため息をつくシンジである。 「お前ら、オレをバカにした代償は高く付くからな……! 見てろよ、オレの必殺技……!」 と、デルタはその両手を交差させ、その手の甲を赤く光らせた。そこから吹き荒れる魔力の風に、思わずシンジとリン隊員は剣を構えていた。  
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