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看護師が作業を終えて、扉に向かったが、扉の前で思い出したように振り返った。
「15歳のお誕生日おめでとう。歌音ちゃん。」
にこやかな笑顔で言われて、歌音も笑顔で返した。
「ありがとうございます。」
パタリ、と扉が閉まると歌音は無表情にぽつりと呟いた。
「おめでたいの?歳をとると言うことは、それだけ死に近づくのに…」
歌音のいる病室は個室だ。
前は大部屋にいた。
しかし、同室の女の子と友達になっても、彼女達は、突然に「退院」してしまう。
朝、起きたらいない。
検査のあと、病室に戻ったらいない。
彼女たちは、何も言わずに退院していくのだ。
一人の子は、「退院したら、世界中を見に行くの。そしたら絵葉書を送るね。」
そう言った彼女も退院して行ったが、今だに絵葉書は届かないでいる。
そのうち、歌音は友達を作るのを止めた。
彼女達が、いなくなっていくことに恐怖を覚えたからだ。
歌音は、寒々しい白い部屋を見渡した。
駄々をこねて個室にしてもらったけど、誰も訪れない部屋と言うのも、寂しい。
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