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一番好きなキミがいる。
大学生まで、ノー恋愛のノー彼氏。そう言ったらどんだけぼっちなんだと笑われてしまうだろうか。それとも、人によってはそういうことも珍しくないよと言って貰えるのだろうか。
残念ながらというべきか、私はどうしても後者のように前向きに捉えることができなかったクチである。なんせ私の周囲には、いわゆる“リア充”な友達や家族ばかりが溢れていたからだ。親友は、大学どころか中学校から彼氏がいたモテ人間。私にまったく似ていない姉も同様。八歳年上で社会人の彼女には、既に五年付き合っている彼氏がいる。本人の自由奔放な性格もあり、当面結婚するつもりではないようだが、それでも今の彼氏とはラブラブ(もはや死語な気がしないでもない)なんだとやたら自慢してくるので、まあ仲は悪くないのだろう。
「お姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃん!どうしよう、どの服着ればいいかわかんないっ!」
で、現在。そのお洒落でモテモテの姉に、私は家の鏡の前で泣きついているわけで。
「男の子ってやっぱり、スカートの方が好きなんだよね!?ていうか脚出てた方が色っぽいって思われる!?でも正直足出して歩きたくないの太いし、あと昨日無駄毛剃ったばっかりなのにもう生えてきてる気もするというか毛穴汚くてストッキング履いても誤魔化せる気がしないし!ていうかストッキング履いてるとトイレで時間かかって迷惑かかりそうで嫌だからできれば履かないで済ませたいんだけどそれならズボンしか選択肢ないというか、ズボン履くにしても一番マシなのがどれかわかんないっていうか!!」
「うん、とりあえず落ち着け、な?」
完全にパニクっている私を見かねて、姉がぽんぽんと肩を叩いた。
「今日の初デートで着ていく服を、今日選んでるのがまず間違いだったわけ。ある意味手遅れなんだから、そこは潔く諦めてどれかに絞りなさい」
はい、いやまったくその通りで。私はしょんぼりと肩を落とすしかなかった。
大学の漫画研究同好会。まさかそこで、男の子と出逢って付き合うところまで行くとは、入学時には思ってもみなかったことである。
子供の頃から教室で一人、絵ばっかり描いているような人間だった。だからといって、特別絵が上手いとか、そういうことはまったくない。ただただ一人で、妄想の世界の彼氏を作ったり、可愛い魔法少女のイメージを考えたりなんてことをしていただけだ。電子書籍では憧れの少女マンガを読んで、ヒロインを自分に置き換えて楽しんだり、あるいは人の二次創作を読んでみたり。
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