陸と海と空

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「また、この丘で会いましょう」 と、連絡先を交換して私と山口さんはそれぞれの帰路に着いた。 窓からの夕陽が眩しい帰りの列車の中で、今日のことを振り返る。丘からの景色はいつもと同じように綺麗だった。青く美しく輝く海のすぐ上には青く澄んだ空が広がっていて、その空をぐるりと辿っていくと、海を背にして緑深い山がある。そして、線路を走る電車が見える丘は、陸、海、空それぞれの魅力が溢れる私にとっての地球の聖地だ。 もう何度も来ているから、車窓風景も見慣れたものだ。 オレンジ色に輝く海にさよならをしてトンネルに入る。このトンネルを抜けると山に囲まれた景色となり、次のトンネルを抜けると畑や田んぼが広がる田舎町となる。行きの車窓風景も好きだが、帰りの夕陽が沈んでからの空のマジックアワーを見ながら帰る景色も幻想的でとても好きな時間だ。 乗り継ぎも含め、電車の旅を楽しんでいると4時間なんてあっという間である。日が沈んでしまうと窓に移るのは自分の姿と町の明かりである。昼間とは違い車内も静かで自然と気持ちも落ち着いてくる。私は静かに目を閉じた。
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