陸と海と空

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私の仕事は船乗りだ。船乗りと言っても、漁師ではなく、海の研究をしている会社で調査船の航海士をしている。 海の町で生まれ育った私は小さい頃から海が大好きだった。学生の頃に、地球の変化が関係しているのか深海生物が死んだ状態で浜辺に打ち上げられたり、海面に浮いているのが発見されるというニュースを度々見てきた。生きている深海の生物が見てみたい。泳いでいるリュウグウノツカイやダイオウイカに会いたいと思うようになり今に至る。 長い間、調査船の航海士をやってきたが、今日でこの仕事ともお別れだ。船の甲板で潮風を浴びながら休憩をしていると、トントンと後ろから肩を叩かれた。 「君とこの調査船で仕事をするのも今日で最後なんだね。お疲れさま」 調査船の稲佐(いなさ)船長が優しく笑っていた。 「ありがとうございます。お世話になりました。これからのことは楽しみですが、思い出が多すぎて少し寂しいです」 「少しどころか僕は凄く寂しいけどね。君が航海士としてまだ赤ちゃんの頃から見てきたんだから、娘を嫁にやるような感じだ」 「そんな、止めてくださいよ。潮風が目に染みます」 と、私は潤んだ目を船長から逸らして沈んでいく夕日を見た。
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