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「今日の夜は送別会ではなくパーティーだね」
と、いう船長の言葉に「え?」と振り向いた。
「玉名さん、有人潜水艦チームへの配属おめでとう。潜水艦パイロット候補だね。これからの活躍を応援しているよ」
私は、我慢していた涙が目から溢れて
「ありがとうございました」
と、震える声で船長と握手をした。
その日の夜、船長の言葉通り私へのパーティーが開かれ、乗務員の他、研究者さんもみんなで楽しい時間を過ごした。
最後に撮った記念写真は宝物だ。手書きの横断幕の前でみんなで撮影したが、その横断幕の送別会という文字に取り消し線が引かれ、『おめでとうパーティー』と書き直されていたのには笑えた。
月日が流れるのはあっという間で、調査船の食堂で写真を撮った日から3年が経った。その時撮った写真を潜航服の胸ポケットに入れて、今日も厳しい上司や先輩との訓練、潜水艦の整備をする。潜水艦のパイロットは、操縦の他、潜航に必要なあらゆる知識を身につけなければいけない。電気系統や油圧といったシステムについての知識、深海調査船中の内部の環境管理など勉強することは山ほどある。
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