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「何で俺はここに……」
目を覚ますとそこは緑に囲まれた静かな孤島。セミの鳴く声がそこら一帯に響き、そして熱を帯びた砂が地面を覆い尽くしていた。
「ここで……俺はどうしろと」
俺がまず真っ先に考えたのはこれからどうやって生き延びれば良いのかということ。生憎、水の入ったペットボトルも、ナイフのように尖ったものも持ち合わせていない。
そうだ、後ろポケットに何か入れていたはず。そう思って尻側のポケットに手を突っ込んでみた。それはどこかで触れたことのある感触。
「さ、財布……」
俺は立ち上がり、島を見渡した。強い日差しを手で遮りながら、海岸線を歩く。自販機なんて、ある訳ないのに。探してみなくちゃ分からないじゃないの、その一心で歩き回っていた。
砂浜にひたすら並べられた貝殻、隅にひっそりと置かれた破れた浮き輪を見た時、俺は思い出したのだった。
「幸……」
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