孤島

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 **  今頃、夫はどうしているのだろう。それだけが気がかりになっている。  私たちは辛うじて助かったのだけれど、あの時、夫の姿を見つけることは出来なかったのだから。  痛む傷口を抑えて、「ちょっと痛いです」と若い看護師に呟くように言った。「もう少しの辛抱です」と看護師は哀れみの笑みを浮かべる。    その時、テレビからアナウンサーの声がした。  もうこんな時間なのかと、病室の机にあったデジタル時計を見る。18時、窓の外を見てみれば、美しい夕焼け空が広がっていた。  『速報です。✕✕海沿岸で40代と見られる男性が心肺停止の状態で発見されました』    「やっぱり……、」  この瞬間、夫は無事では無かったのだと悟った。    
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