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 それは唐突な出逢いだった。  とある昼下がり、トラック運送業(自営)の(あつし)がコンビニから弁当を買って戻ると、その荷台に見たこともない少女が寝転がっていた。  暗緑色のホロ付き二トントラック。ホロに隠れていたとはいえ、いったいいつからここにいたのだろうか? 「誰だお前?おい!こんなとこで寝てちゃダメだ。自分ちに帰れコラ」 「ん?うう―――――――――ん……」  少女は身体を起こすと猫のように両腕を上げて伸びをした。  そしてぼんやりとした顔でショートボブの髪をもしゃもしゃと掻き上げる。 「ええっと……おじさん、誰」 「おじっ……まだこれでも俺はなあ30そこそこ……と、なんだ、あれ?お前所持品ゼロか?名前は?」 「ん―――――――わかんない。ああそっか、この身体。そっか」 「何がそっかなんだ?いいから降りろ。仕事の途中なんだよ。今から長距離移動してそこに資材を搬入しねえといけねえんだ」 「邪魔しないよぅ。出発していいよぅ。迷惑かけないからぁ」 「いやお前がいるってのが大迷惑なんだよ!」  ふにゃあああ、と欠伸する少女に緊張感はまるでなく、降りる様子もない事から、敦はしょうがなく近場に見えた派出所に向かった。
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