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【3】
人気のない公園の駐車場、残された敦は恐る恐るリズミーの顔を覗き見た。
どこからどこまでが本当で現実なのか、両親が帰った今となってもどうにも釈然としない。
けれど正直、連れ帰られなくて良かったと安堵する自分がいた。
あんな両親のとこなら、戻らなくてもいいだろう。
リズミーはいつものリズミーに戻っていた。
「ん―ーーーーーっ!」と両腕を天に伸ばし、空気を勢いよく飲み込むような大欠伸をする。
「はああ、疲れちったあ。寝よ寝よ」
ふにゃふにゃな笑顔でポテポテと歩きつつ、トラックの荷台に戻っていく。
「敦ぃ、何してんのぉ。出発進行ぅ!あいつらがさあ、また気が変わって迎えに来たら大変じゃんかよう」
「えっ?あ、ああ、そうか。そうだな」
荷台でごろり寝そべり、よろしくと言った感じで手のひらの先をこめかみに寄せる。
敦はその頭をぐりぐりと撫でまわしてから運転席に回った。
エンジンをかけると同時に、後方の荷台から歌が聴こえた。
いつも通りの透き通った声、上機嫌な声だ。
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