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けれど少女は頑として荷台から降りず、捕まえようとしてもひらりひらりと踊るように舞って腕からすり抜けていく。  季節は十月。薄手のタートルネックに着古したオーバーオールを纏った少女は全く持って正体不明だった。やむなく警察に立ち寄り家出少女で届け出がないかを見てもらったが、近辺の該当者の特徴には当てはまらなかった。  そのふにゃふにゃした動きはまるで猫のようだった。捕まえようとしてずっと目で追っているうちに、巡査はまるで猫カフェで癒されたかのようにホヤッとしてしまった。 「う~ん、可愛い。しかたないなあ。荷台から降りないようですし、どうです。もう少しだけ面倒を見ていただいて。家出でないのであれば、帰りたくなれば自分で降りるでしょう」  適当な巡査は厄介払いをしたい気持ちを隠すこともなく、清々しいほど投げやりに敦に少女を預けた。一応届け出が入った場合のため連絡先だけを交換する。 「ああくそ、めんどくせえな。だいたい荷台に人載せるのだって交通法違反だろうに」  ぼやく敦をよそに、少女は荷台でゴロゴロとリラックスしている。
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