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 それから敦は県境を越えて取引先の商店の資材倉庫へとトラックを走らせた。  目的地に着き、手押しのカートに資材を目いっぱい載せて運ぶ。  トラックの荷台にカートを寄せようとして、そこに立ちあがっている少女に気づいた。 「お前、出てくんなって言ったろう、が……っ……」  悪態をつこうとして、声が途中で止まった。 少女は歌っていた。  高いソプラノは天に澄み渡るかのよう。  日本語でも英語でもなく、どこの何の歌か分からずとも、その声は万人の胸を打つものと言っても過言でないほど美しかった。  伸ばした右腕の先、たおやかに折れた指先には歌に惹かれたかのように小鳥が留まっていた。  オレンジが特徴的な可愛らしい鳥、あれは確かヤマガラと言っただろうか。  不思議な歌。  不思議な声。  不思議な少女。  敦に気づくと、少女は「ふふふ」と笑って微笑を向けた。 「旅をしたいんだぁ。おじさん。しばらくあたしをここに置いて?」  逆光に笑みは魔性を増した。  この世のものでない輝きがそこにはあった。
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